Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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雇用保険法の改正

   令和6年6月18日

 先月、雇用保険法の一部改正案が成立しました。実務上影響がある項目を中心に取り上げていくと次の改正項目が挙げられます。

 

  1. 雇用保険の適用拡大(令和10年10月1日施行)

     現在、雇用保険の加入基準は1週の勤務時間が「20時間以上」となっていますが、これが「10時間以上」に拡大されます。総務省の推計では、この改正によって約500万人の被保険者があらたに加入対象となる見込みです。
     この改正にあわせて、失業保険(基本手当)の賃金支払基礎日数が「11日以上または80時間以上」から「6日以上または40時間以上」に変更されます。


     
  2. 給付制限期間の短縮(令和7年4月1日施行)

     基本手当を受給する際に、自己都合による退職の場合、現行制度では2か月間の給付制限期間が設けられていますが、これを1か月間に短縮されます。この短縮規定は、直近5年間で2回までとし、3回目以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3か月とされます。

     
  3. 育児休業給付の財政基盤強化

     育児休業給付に係る受給費用の急増を受けて、令和6年度から国庫負担の割合を1/80から1/8に増額されます。もともと国庫負担は1/8であるところを暫定措置として1/80としてきましたが、本則の負担率とする改正です。(公布日施行)
     さらに男性の育児休業の取得率向上を目指すことによって、育児休業給付に係る費用が増えることを想定して、保険料率を現行の0.4%から0.5%に引き上げる改正も予定されています。(令和7年4月1日施行)

 

 その他の改正メニューの詳細は厚生労働省のこちらのサイトで公開されていますので、ご参照ください。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40264.html

 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001255172.pdf

 

 雇用保険に先んじて、社会保険も10月より適用拡大が予定されています。セーフティーネットから零れ落ちる雇用者を減らす効果を期待したい一方で、給付が低額かつ細切れになることによって失業保険制度の本来の機能が果たされるのかが若干気にかかります。

 

 遡れば年金制度にもかつて無年金問題が課題になっていた時代があり、平成29年に受給資格期間が短縮されたことでほぼ解消されたのですが、新たに低年金の問題がでてきました。

 制度の趣旨に沿いながら実効性のある改正も満たすことは難しい課題だと感じます。

マイナ保険証利用促進集中取組月間

   令和6年5月15日

 今月より7月までの3か月間、政府は「マイナ保険証利用促進集中取組月間」として、年末の健康保険証の廃止とマイナンバーカード保険証(マイナ保険証)への移行を目指した取り組みを強化しています。

 https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/001248133.pdf

 

 取組強化の背景には、低迷し続ける利用率があげられます。直近の統計によると3月末時点のマイナ保険証の利用率は5.47%に留まっています。

 

 取組強化の対策としては、病院や診療所、薬局に対して、マイナ保険証の利用実績に応じて一時金を支給する方針を打ち出しています。

 

 利用率の低迷をめぐっては、旗振り役の公務員(共済組合)も同様の状況が続いており(5.73%)、利用率向上策の一環としてか4月より共済組合の年金請求においては、マイナンバーの記載が義務付けられています。

 この改正にともない年金請求書の様式も4月より変更になっていて、マイナンバーの独自記載欄が設けられるになっています。

 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/rourei/seikyu/kinyu.html#cms012

 

 ただし記載義務化は共済組合のみで共済以外の年金請求手続については、現時点では任意の取扱いになっています。

 

 上記の統計資料では4人に1人がマイナ保険証を利用したことがあり、4割が常時携帯していると回答しています。医療機関の設備環境が整えば利用率が上がるという想定のもと、今回の普及策が推進されているようです。

 

 医療機関を問わず、マイナンバーカードの利用率向上には社会インフラの整備が不可欠なわけですが、便利さを追求するということは、ときにセキュリティを犠牲にしてしまいかねない矛盾を抱えます。

 

 マイナンバーが抱える、この二律背反の課題を解消する法整備やシステムが構築されれば、加速度的に利用が浸透していくように思われます。

 

 マイナ保険証に関連するサイトは、以下よりご確認できます。

  • マイナポータル

 https://myna.go.jp/html/hokenshoriyou_top.html

  • デジタル庁

 https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/insurance-card

  • 厚生労働省

 https://www.mhlw.go.jp/stf/index_16743.html

 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22682.html

 

子ども・子育て拠出金

   令和6年4月15日

 子ども・子育て拠出金は、かつて児童手当拠出金という名称でしたが、平成27年に「子ども・子育て支援法」が施行されたことによって現在の名称になりました。

 

 その子ども・子育て支援法の一部を改正する法案が今国会で審議されています。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ba94b64b-731f-4f48-97ba-b54a76b0aeb6/a528abca/20240216_councils_shienkin-daijinkonwakai_03.pdf

 

 子ども・子育て拠出金の掛金率は現在0.36%ですが、掛金率は制度発足以来上昇を続けてきています。

 

  • 平成27年度:0.15%
  • 平成28年度:0.2%
  • 平成29年度:0.23%
  • 平成30年度:0.29%
  • 平成31年度:0.34%
  • 令和2年度:0.36%

 

 子ども・子育て拠出金の掛金については子ども・子育て支援法で次のように定められています。

 

(拠出金の徴収及び納付義務)

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政府は、児童手当の支給に要する費用(児童手当法第十八条第一項に規定するものに限る。次条第二項において「拠出金対象児童手当費用」という。)、第六十五条の規定により市町村が支弁する同条第二号に掲げる費用(施設型給付費等負担対象額のうち、満三歳未満保育認定子どもに係るものに相当する費用に限る。次条第二項において「拠出金対象施設型給付費等費用」という。)、地域子ども・子育て支援事業(第五十九条第二号、第五号 及び第十一号に掲げるものに限る。)に要する費用(次条第二項において「拠出金対象地域 子ども・子育て支援事業費用」という。)及び仕事・子育て両立支援事業に要する費用(同項において「仕事・子育て両立支援事業費用」という。)に充てるため、次に掲げる者(次項において「一般事業主」という。)から拠出金を徴収する。

一 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第八十二条第一項

二~四(略)

2 一般事業主は、拠出金を納付する義務を負う。

 

 そして掛金額の計算と掛金率の上限については、次のように定められています。

(拠出金の額)

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拠出金の額は、厚生年金保険法に基づく保険料の計算の基礎となる標準報酬月額及び標準賞与額(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平 成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業若しくは同法第二十三条第二項の 育児休業に関する制度に準ずる措置若しくは同法第二十四条第一項(第二号に係る部分に限 る。)の規定により同項第二号に規定する育児休業に関する制度に準じて講ずる措置による休業、国会職員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百八号)第三条第一項に規定する育児休業、国家公務員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百九号)第三条第一項(同法第二十七条第一項及び裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第二百九十九号) (第七号に係る部分に限る。)において準用する場合を含む。)に規定する育児休業若しく は地方公務員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百十号)第二条第一項に規定する 育児休業又は厚生年金保険法第二十三条の三第一項に規定する産前産後休業をしている被用者について、当該育児休業若しくは休業又は当該産前産後休業をしたことにより、厚生年金保険法に基づき保険料の徴収を行わないこととされた場合にあっては、当該被用者に係るものを除く。次項において「賦課標準」という。)に拠出金率を乗じて得た額の総額とする。

2 前項の拠出金率は、拠出金対象児童手当費用、拠出金対象施設型給付費等費用及び拠出金対 象地域子ども・子育て支援事業費用の予想総額並びに仕事・子育て両立支援事業費用の予定額、賦課標準の予想総額並びに第六十八条第一項の規定により国が負担する額(満三歳未満 保育認定子どもに係るものに限る。)、同条第三項の規定により国が交付する額及び児童手 当法第十八条第一項の規定により国庫が負担する額等の予想総額に照らし、おおむね五年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならないものとし、千分の四・五以内において、政令で定める。

 

 この規定に基づいて、現在の掛金率が政令で次のように定められています。(なお改正法案では上限率が4.0/1000と改められています)

 

子ども・子育て支援法施行令(平成26613日政令第213号)

(法第70条第2項の政令で定める拠出金率)

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法第七十条第二項の拠出金率は、千分の三・六とする。

 

 子ども・子育て拠出金は、毎月の社会保険料納付とあわせて年金事務所から請求が来ているので陰に隠れている印象があります。料率も他の保険料と比べれば低いので、あまり気がつきにくい存在です。しかも全額事業主負担であるため一般の従業員(被保険者)には馴染みが薄いといえるでしょう。

 

 昨今、子ども・子育て支援金の話題で持ちきりですが、これを機に拠出金にも関心が集まって費用負担や徴収方法などのあり方そのものにも深堀されることが待たれます。

 

 改正法案の全文は、こども家庭庁のサイトに掲載されています。

 https://www.cfa.go.jp/laws/houan/e81845c0

戸籍法の改正

  令和6年3月14日

 3月1日より戸籍法が改正され「広域交付制度」が始まっています。本籍地以外の自治体でも発行できるようになり、最寄りの市区町村から取り寄せること可能となります。

 

 相続の際などで、相続人の戸籍謄本を全国各地から取り寄せなければならなかったものが、一か所の市区町村からまとめて発行することもできるようになるめ利便性向上が実現されます。ただし、一部事項証明書や個別事項証明書は請求できません。

 

 また今後の予定としてマイナンバーとの連携によって戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付が省略されるようにもなります。

  例えば公的年金の請求を行うときに、配偶者がいる場合には戸籍謄本の添付が必要であるため、わざわざ本籍地の自治体より取り寄せていました。3月より日本年金機構からデジタル庁や法務省への情報照会の試行運用が開始されていて、本格運用の段階になれば戸籍謄本の添付も省略されるようになります。

 

 年金請求では、いわゆる3点セットと呼ばれる「戸籍謄本」「住民票」「所得証明書」の添付が必須でした。マイナンバーとの連携で住民票と所得証明書の省略は、すでに実現されていましたが戸籍謄本は引き続き添付が必要でした。情報照会が本格化されれば3点セットのすべてが添付省略の取り扱いとなります。

 

 年金請求における添付省略は、令和以降徐々に実現されています。

  • 令和元年7月:日本年金機構から地方自治体への年金給付関係の情報照会の開始(所得証明書の省略)
  • 令和4年10月:日本年金機構からデジタル庁へのマイナンバーと公的給付等口座情報の取得開始(預金通帳の写し等の省略)

 

 戸籍謄本の省略は年金請求時だけでなく、児童扶養手当や健康保険の被扶養者届など他の社会保障関係の手続で身分関係を証明する必要がある場合のときも省略が可能となる予定です。

 

 戸籍法の一部改正の内容は法務省のホームページにも掲載されています。

 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

専門業務型裁量労働制の改正

  令和6年2月16日

 4月から改正される専門業務型裁量労働制で眼目とされるのが、本人の同意が要件として追加されることです。

 

 労使協定の記載事項としても追加されるところから、改正施行日までに労使協定を締結する必要があります。

 素朴な疑問として、本人の同意をどのタイミングでとればよいのか、という点があります。

  厚生労働省から公表されている「裁量労働制Q&A」には、同意の撤回のタイミングについての記載があります。(Q1-7

 

Q

労使協定又は決議において同意の撤回の手続を定める際、同意の撤回を申し出るタイミングを指定することは可能か。

 

A

基本的に同意の撤回は労働者の任意の時期に申出を行うことを可能とし、その時点から適用が解除されるようにすることが適切であるが、労使協定や決議において、同意の撤回の手続について、 例えば「適用解除予定日の日前までに同意の撤回を申し出る必要がある」等の定めをすることは可能である。 その場合において、労働者の同意の撤回を踏まえた労務管理上の手続きにおいて一定の期間が必要な場合も考えられるが、必要以上に長い期間を設定することは、実質的に労働者の同意の撤回を認めていないこととなり、不適当である。

 

 この考え方に倣えば、「同意の撤回」の部分を「同意」と読み替えれば、そのまま運用できると思いたいところですが、実際はそうはいかなさそうです。

 

 同意を得るタイミングは、時系列的には次の3時点が考えられます。

 ① 労使協定の締結前

 労使協定を締結後から届出前

 労使協定の届出完了後から有効期間の初日前

 

 同じ厚生労働省から出されている以下の手引書では、③の時点でとることを想定しているようです。

 https://www.mhlw.go.jp/content/001166653.pdf

 

 普通に考えれば、締結されていない労使協定(案のような状態)の内容で同意が得られたとしても、その後に締結された労使協定の内容に変更が生じた場合、再度同意を得なければならないことになります。

 

 上記手引書に掲載されている裁量労働制対象者に対する説明書や同意書のひな型を観ても、やはり締結された労使協定について同意する構成になっています。

 

 しかし実務面に着目した場合には、労使協定の締結前に同意を得たほうが合理的なのではないかという気がしています。

 個別の同意を得た労使協定(案)であれば労使代表者の合意形成もスムーズにいくように思われます。言い換えると労使協定が締結された後に個別の同意が得られなければ民主的プロセスで選出された労働者代表としての立場にも疑問符がついてしまうことになりかねません。

 

 裁量労働制の対象労働者が多数になる場合、協定の締結後に同意を求めなければならないとなると、有効期間までに全員の同意が取れるのかという時間的問題にも直面しそうです。

 

 改正法の精神としては、実質的な同意が担保されていることを重視しているのだとは思いますが、色々調べたり考えたりしていると気になる点ではあります。

同一月内の複数回賞与

  令和6年1月18日

 年末年始や年度末では、決算賞与など臨時の賞与が支払われることがあります。同じ月に通常の賞与も支払われると、同一月に2回以上賞与が支払われることになります。

 

 賞与から源泉控除される社会保険料には上限額があり、健康保険料と介護保険料は1年度(4月~翌年3月)あたりで573万円と決められています。かたや厚生年金保険料は1か月あたりで150万円と設定されています。

 

 同一月内で複数回の賞与が支払われる場合、厚生年金保険料の上限に到達することがしばしば起こります。月の最初の賞与額で上限額を超えているのであれば、2回目以降の賞与には厚生年金保険料が発生しないため計算はシンプルです。

 一方、2回目以降の賞与額で上限額を超える場合や、同一月内の複数回の賞与合計額が上限額に達しない場合は、給与計算時に調整が必要です。

 

 賞与から控除する社会保険料は標準賞与額をもとに算出されます。標準賞与額は1,000円未満の端数を切り捨てた額とされていますが、同じ月に賞与が2回以上支払われた場合、その合計額に対して1,000円未満を切り捨てた額が標準賞与額となります。

 

 そこで問題になるのが賞与から控除する社会保険料ですが、1回目の支給時点では2回目の賞与額が確定していないケースの場合、1回目の計算では原則通りの標準賞与額をもとに社会保険料を控除するしかありません。そして2回目の賞与計算時で最終的な標準賞与額から1回目の賞与で控除した保険料との差額を控除する計算となります。

 

 例えば、上のケースで厚生年金保険料を例に挙げると次のようになります。

(例1)1回目賞与額:400,500円、2回目賞与額:500,500円(標準賞与額:901千円)

  • 1回目厚生年金保険料:36,600円
  • 2回目厚生年金保険料:45,841円(901千円×9.15%-36,600円)

(例2)1回目賞与額:500,500円、2回目賞与額:999,600円(標準賞与額:1,500千円)

  • 1回目厚生年金保険料:45,750円
  • 2回目厚生年金保険料:91,500円(1,500千円×9.15%-45,750円)

 

 なお、子ども子育て拠出金も標準賞与額の上限は1か月あたり150万円となりますが、全額会社負担のため、上記のような給与計算時の調整は起こりません。