Mikura Labor & Social Security Attorney Office
みくら社会保険労務士事務所
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令和8年5月18日
36協定には対象期間が設定されていて、対象期間中は協定の内容にそった労働時間管理に制約されます。
需要の急増などによって想定した時間外労働では対応できない場合、通常は「特別条項」とよばれる上限時間の特例措置を労使協定に盛り込みます。
しかし特別条項に定めた上限時間も超えて時間外労働が発生してしまうことが予見されるときに、労使協定の再締結は可能なのかという問題があります。
行政通達では対象期間中の36協定の再締結について、次の定めがあります。(基発122第15号 平成30年12月28日)
第2 時間外労働の上限規制
問5
対象期間の途中で時間外・休日労働協定を破棄・再締結し、対象期間の起算日を当初の時間外・休日労働協定から変更することはできるか。
答5
時間外労働の上限規制の実効性を確保する観点から、法第 36 条第4項の1年についての限度時間及び同条第5項の月数は厳格に適用すべきものであり、設問のように対象期間の起算日を変更することは原則として認められない。なお、複数の事業場を有する企業において、対象期間を全社的に統一する場合のように、やむを得ず対象期間の起算日を変更する場合は、時間外・休日労働協定を再締結した後の期間においても、再締結後の時間外・休日労働協定を遵守することに加えて、当初の時間外・休日労働協定の対象期間における1年の延長時間及び限度時間を超えて労働させることができる月数を引き続き遵守しなければならない。
結論はわかりやすいのですが、後段なお書き以下のくだりが例示的ケースなのか限定的ケースなのかというところが引っ掛かります。文章を素直に読めば前者のように思われるのですが、結局のところ従前の協定が生きている対象期間中は、当初定めた限度時間に拘束されることになるので実用性は低いといえるでしょう。
余談ですが36協定には「対象期間」と「有効期間」という2つの期間が存在します。両者の違いについて、同じ通達で説明がされています。
第2 時間外労働の上限規制
問1
時間外・休日労働協定の対象期間と有効期間の違い如何。
答1
時間外・休日労働協定における対象期間とは、法第 36 条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものであり、時間外・休日労働協定においてその起算日を定めることによって期間が特定される。これに対して、時間外・休日労働協定の有効期間とは、当該協定が 効力を有する期間をいうものであり、対象期間が1年間に限られることから、有効期間は最も短い場合でも原則として1年間となる。また、 時間外・休日労働協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましい。なお、時間外・休日労働協定において1年間を超える有効期間を定めた場合の対象期間は、当該有効期間の範囲内において、当該時間外・ 休日労働協定で定める対象期間の起算日から1年ごとに区分した各期間となる。
形式上は、1年を超える有効期間を定めることができても対象期間は1年であるため、起算日の更新上やはりその都度協定の作成や届出が発生することになります。
その他の協定についても同通達で記載されていますので、興味がある方はこちらをご参照ください。
令和8年4月16日
取締役などの役員には、社会保険の加入について、通達で独自の基準が定められています。「法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について」(昭和24年7月28日保発第74号厚生省保険局長通知)という通達があります。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta2492&dataType=1&pageNo=1
法人に使用され、労務の対象として報酬を受け取っている場合には、被保険者とする取り扱いがなされてきました。
昨今、形式的には上記の条件を装いながら、個人事業主やフリーランスを法人の役員として社会保険に加入させている一方で、、個人事業主やフリーランスから会費等と称して役員報酬を上回る金額を納付させている法人が確認されているようです。
個人事業主やフリーランスは、通常国民年金と国民健康保険に加入して、それぞれの保険料を納付するのですが、その負担を回避する目的で、低額の役員報酬に基づく低い社会保険料を納付するケースがあるとのことです。
こうした弊害を受けて日本年金機構は先月に新たな行政通達をだしました。
「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/001675920.pdf
法人の役員は、通常の労働者と異なり出勤状況を確認する資料がないため、就労の実態を証明しにくい特徴があります。俗に役員の「常勤性」という点についても客観的な基準があいまいな部分があり、被保険者資格の判断が難しいところもあります。
法人役員の社会保険の加入基準は、次の2点の実態を踏まえて判断するとされています。
「1」について、新通達では、職員に対する指揮監督権が無い場合や経営の関与度合いが低い場合(意見を述べる程度)では労務の提供はないと判断されます。
「2」については、役員会の支払われる報酬や旅費などの実費弁償の支払は、「業務の対価として経常的に支払いを受けるもの」とは認められないと例示されています。
これまで法人役員の社会保険については、どちらかというと未加入の状態が問題であるかどうかという相談が多かったのですが、今後は加入実態が妥当であるかどうかという相談も想定する必要が出てくるかもしれません。
令和8年3月16日
4月からの法改正を受けて、労務管理の分野で先月2つの指針が公表されています。
少子高齢化による高年齢労働者の増加や医療技術の進歩等によって疾患を抱えた労働者が中長期的に就労する機会が増えています。こうした状況を踏まえて、4月より労働施策総合推進法が改正され、事業主に労働者に対する治療と仕事の両立支援対策が努力義務として課されることになりました。「治療と就業の両立支援指針」は、この改正を受けて公表されたものです。
この指針は大別して5つの項目で構成されています。
各項目の詳細は、こちらの資料で詳細を確認することができます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001666578.pdf
「高年齢者の労働災害防止のための指針」も高年齢労働者の増加の影響を受けて公表された指針です。高年齢労働者は若年層に比べて転倒などの労働災害の発生率が高いとされています。4月より労働安全衛生法が改正されて、事業主に高齢労働者に対する労働災害防止対策が努力義務として課されることになりました。
指針では事業主が講ずべき措置として5つの項目が定められています。
各項目の詳細は、こちらの資料で詳細を確認することができます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001654297.pdf
いずれの指針も前身といえるガイドラインが存在しています。(「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」「エイジフレンドリーガイドライン」)。今回の改正は努力義務であるため、それぞれの課題に対応してきた企業にとっては、ある程度はすでに対応済みなところもあるかもしれません。
しかし治療と就労の問題は高齢労働者に限ったことではなく、若年労働者にとっても切実な問題です。精神疾患の増加や出産の高齢化にともなう疾病の問題も現場レベルで相談が増えています。
労働災害防止についても、高齢労働者にとってはもちろん、職場環境の改善は現役世代の働きやすさにつながり、今後促進していくであろう障害者雇用の課題克服にも寄与します。
経営資源に限りがある以上、高齢労働者の少ない会社や治療しながら働いている労働者がいない企業にとっては、当面は必要に応じた対応にならざるとえないと思われます。できるところからでも取り組むことで、完全義務化の改正になったときにも慌てずに対処したいところです。
令和8年2月16日
全国健康保険協会(協会けんぽ)では、給付にかかる申請や資格確認書・限度額認定証などの発行手続きについて電子申請によるサービスを開始しています。
申請できるのは、申請者本人(一部の手続きは被扶養者も可能)と社会保険労務士とされています。本人が電子申請を行う場合には、マイナンバーカードの取得とマイナポータルのアプリをパソコンやスマートフォンにインストールすることから始まります。
社会保険労務士が電子申請を行う場合には、ID・パスワードを新規に発行することになります。
給付にかかる申請は紙による申請が長らく続いていましたが電子申請が実施されることで郵送費用や時間的なコストがかからなくなることが期待されます。
協会けんぽが取り扱う手続きのほとんどが申請の対象となっているようですので、業務効率の大幅な改善につながるのではないかと思われます。
とくに近年はマイナンバーカードを活用した「HRテック」の推進を実感することも多く、離職票がマイナポータルへ直接交付されるケースも出てきました。
その一方で繁忙期に雇用保険の資格取得手続が渋滞したり、育児休業給付と出生後休業支援給付金の申請ずれの問題など、従来の紙申請のほうが早く完了してしまう課題もでてきています。
申請の電子化・ペーパーレス化は止めようがなく、今後は健康保険組合によるさらなる電子化の推進が待たれるところですが、過渡期に起こるハレーションを解決しながら推進していくことになりそうです。
協会けんぽの電子申請サービスの詳細は、こちらから確認することができます。
令和8年1月16日
被扶養者の認定対象者が自営業を営んでいる場合、収入の考え方が給与収入の場合と異なります。
おさらいとして、被扶養者の収入基準は130万円未満(60歳以上や障害者の場合は180万円未満)とされています。加えて昨年10月より19歳以上23歳未満の場合には150万円未満に緩和されています。
この年収額は認定対象者が給与収入の場合には額面上の給与収入額で判断されますが、自営業者の場合には事業経費が発生するため経費を除いたあとの額で判断されます。
ただし税法上認められているすべての経費が控除対象になるわけではありません。その事業を行うために不可欠な費用のみ(多くの健保組合では「直接的必要経費」という表現を用いているところが多いですが)を控除した額で判断するとしています。
「直接的必要経費」の考え方も健保組合によって微妙に異なりますが、売上原価(製品の原材料費や仕入れ代)をあげています。地代家賃や水道光熱費を含めているところもありますが、あくまで事業のために限定されるため、自宅を事務所にしている場合などは生活用と明確に区分されていなければ経費として認めないスタンスをとっているところが多く見受けられます。広告宣伝費や接待交際費、租税公課、減価償却費などは、おおむね経費外の扱いになっています。
そもそもの前提として自営業者を認定対象者としないという考え方が健保組合にはあるようです。被扶養者は「生計を維持される者」であるため、本来は経済的に自立している自営業者を認定することは制度的に矛盾するというのが根拠ですが、家業の継承や家計補助的な目的で自営をしていることもあるので、上記の認定基準を設けていることになります。
協会けんぽの認定基準もおおむね同じとなりますが、具体的な算定方法については最終的に各保険者の運用に委ねられていますので、協会けんぽや各健保組合に確認すると良いでしょう。
認定基準の運用については下記の通達で示されています。※S61.4.1庁保険発第18号3の(2)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb1695&dataType=1&pageNo=1