Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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「配偶者(特別)控除」と「源泉控除対象配偶者」

平成30年12月10日

 年末調整業務もピークを迎えている頃合かと思います。今年はなんと言っても配偶者控除に係る改正の最初の年ということもあって、その取扱いに神経を使っているご担当者も多いことでしょう。

 

 改正の内容が複雑に感じる原因に、配偶者にかかる新しい定義が出たことと控除額を決定するにあたり、所得者本人の収入が大きく影響されるようになったことが考えられます。

 

 昨年までは、いわゆる「103万円の壁」と呼ばれる配偶者の給与収入が広く認識されていました。103万円以下であれば所得者本人の収入は考慮せず配偶者控除が受けられたところ、今年からは夫の収入によって配偶者控除が受けられないケースがでてきます。※配偶者特別控除に関しては昨年までも所得者の収入要件がありました。 

  

 両者の定義について要約すると、次のような条件になります。

【配偶者控除】

  • 所得者本人の合計所得金額が、1,000万円(給与収入に換算すると1,220万円)以下であること
  • 配偶者の合計所得金額が、38万円(給与収入に換算すると103万円)以下であること

【配偶者特別控除】

  • 所得者本人の合計所得金額が、1,000万円(給与収入に換算すると1,220万円)以下であること
  • 配偶者の合計所得金額が、38万円~123万円(給与収入に換算すると103万円~201.6万円)以下であること

 

 上記の基準は「配偶者控除」や「配偶者特別控除」が受けられる範囲であって、いずれかに該当した場合でも、夫婦の所得額によって「控除額」が変わります。そこで控除額を算出するための書類として「給与所得者の配偶者控除等申告書」が追加されました。

 

 さらに、今年より新しく「源泉控除対象配偶者」という定義も生まれました。簡単にいってしまうと、毎月の給与計算の際に扶養親族としてカウントできる配偶者、ということになるわけですが、こちらについても条件が設定されています。

【源泉控除対象配偶者】

  • 所得者本人の合計所得金額が「900万円」(給与収入に換算すると1,120万円)以下であること

  • 配偶者の合計所得金額が、「85万円」(給与収入に換算すると150万円)以下であること

 

 配偶者(特別)控除の合計所得金額と差異があるところがミソです。所得者本人と比較すると、源泉控除対象配偶者のほうが基準が厳しく、配偶者のそれと比較すると配偶者特別控除の枠内に設定されています。

 

 つまり、配偶者控除に該当していても源泉控除対象配偶者には該当しないケースや配偶者特別控除であっても源泉控除対象配偶者に該当する領域が存在することになります。

 

 昨年までは、配偶者控除=控除対象配偶者、配偶者特別控除≠控除対象配偶者とシンプルに整理できたところが、今年からは変更される可能性がでてくるといえそうです。

 

 国税庁のHPにも詳細はFAQサイトが臨設されています。あわせてご参照ください。

 https://www.nta.go.jp/users/gensen/haigusya/index.htm

「過労死等防止啓発月間」と「ねんきん月間」

平成30年11月12日

 毎年11月は厚生労働省が指定するいくつかの強化月間があります。代表的なものが「過労死等防止啓発月間」と「ねんきん月間」です。

 

 過労死等防止啓発月間は、「過労死等防止対策推進法」が平成26年(2014年)11月1日に施行されたところから由来しており、直接的にはその第5条に定められています。

 

【過労死等防止対策推進法5条】

第1項 国民の間に広く過労死等を防止すること重要性ついて自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間を定める。

 

第2項 過労死等防止啓発月間は11月とする。
 
第3項 略
 

 先般成立した働き方改革法の目玉は長時間労働の削減であり、いわゆる残業の上限規制の諸数値は、この過労死認定基準の残業ラインより引用されています。過労死ゼロを実現するため政策目標として、主に次のような具体的数値が設定されています。

 

  • 週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下(2020年まで)
  • 労働者30人以上の企業で勤務間インターバル制度の導入割合を10%以上(2020年まで)
  • 年次有給休暇の取得率を70%以上(2020年まで)
  • メンタルヘルス対策に取り組む事業所の割合を80%以上(2022年まで)

 

 一方「ねんきん月間」は、平成26年度より11月30日を「いいみらい」の語呂にあわせて「ねんきんの日」と定められたことにより設定されました。「ねんきんネット」の普及や賛同団体や金融機関、保険会社等において公的年金制度の理解を踏めるための広報やシンポジウムの開催などが行われています。

 

 厚生労働省および日本年金機構の特設サイトも掲載されています。

 

公法と私法

平成30年10月15日

 国や自治体と国民の関係を規律する法律を公法といいます。一方、個人間の権利義務関係を規律するのが私法です。前者の代表が憲法や行政法、刑法等が挙げられ、後者のそれは民法や商法があるとされています。

 

 労働法の分野でも公法上の問題と私法上の問題とが問われる局面があります。代表的なのは時間外労働・休日労働です。時間外労働や休日労働に関する規定は労働基準法36条に定められています。

 

【労働基準法36条】

第1項 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、(中略)その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。(後略)

 
第2項 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる
 

 前提として、労働基準法32条では、労働時間は1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないとされています。ただし、上記36条の第1項に記載されている労使協定を届け出ることによって時間外労働・休日労働をさせることができるとされています。条文番号を採って「36(サブロク)協定」をいわれています。

 

 ただし、この規定は残業をさせても労働基準法に抵触しないに過ぎません。つまり、行政と会社の公法上の「免罰効果」があるにとどまり、会社が従業員に残業を「命令」するためには私法上の根拠が別途求められます。そこで就業規則や労働契約において残業命令に関する規定を明記することが必要になると考えられています。

 

 また、時間外労働は1ヶ月45時間以内、1年360時間以内とされていますが、これは36条2項に基づいて厚生労働大臣が「時間外労働の限度に関する基準」として定めたものです。実質的な規制「基準」として取り扱われていますが、厳密には「法令」ではないため、抵触したときに法令違反となるかは議論が別れるという見解もあります。

 ※ただし、先般成立した「働き方改革法」によりこの上限規制が労働基準法に記載されることにな   り、平成31年4月1日(中小企業は1年後)より法令違反となります。

 

 実は、労働基準法には36条と似たような「法令」に基づき「基準」を定めた構成をしている条文があります。労働契約期間について定めた14条です。

 

【労働基準法14条】

第1項 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。(各号略)

 

第2項 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる

 

 14条2項に基づいて定められているのが「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」です。詳細は下記のサイトより確認することができますが、基準のひとつに「雇止めをする場合には30日前に予告する」というルールがあります。

 

 この基準に該当する契約社員を30日前に予告することなく雇止めをした場合には、公法上の基準に抵触することになるわけですが、それが私法上の雇止めの効力に直結するわけではないという点は注意が必要です。

 

 実務的には36条基準にせよ14条基準にせよ労働基準法に抵触しないために遵守するという一義的な目的があります。しかし、それはあくまで公法上の問題であり、あわせて私法上の問題をクリアするためには別に個人間の労働契約等において措置が不可欠になります。

 

 

国民年金保険料の産前産後休業期間の免除制度

平成30年9月4日

 平成31年4月より国民年金第1号被保険者の産前産後休業期間中における保険料免除制度が始まります。健康保険・厚生年金保険の被保険者には、すでに産前産後休業期間にかかる保険料免除制度がありましたが、来年度より国民年金の被保険者にも導入されます。

 

 免除の対象となる期間は出産予定日又は出産日の属する月の前月から4ヶ月間です。多胎妊娠の場合は、出産予定日又は出産日の属する月の3ヶ月前から6ヶ月間となります。「出産」の定義は、他の法令(労働基準法、健康保険法、厚生年金保険法等)に倣い、妊娠85日以上の出産をいいます。

 

 免除対象者は、国民年金の第1号被保険者で、出産日が平成31年2月1日以降のケースとなります。施行日が平成31年4月1日であるため、施行日前後で免除対象月数が変わってきます。

 

【出産日と免除対象月および免除月】

  • 出産日が平成31年2月の場合:免除対象月は平成31年1月~4月。免除月は1ヶ月(4月)
  • 出産日が平成31年3月の場合:免除対象月は平成31年2月~5月。免除月は2ヶ月(4・5月)
  • 出産日が平成31年4月の場合:免除対象月は平成31年3月~6月。免除月は3ヶ月(4~6月)
  • 出産日が平成31年5月の場合:免除対象月は平成31年4月~7月。免除月は4ヶ月(4~7月)

 

 平成31年5月時点では改元が行われているため、新元号以降に出産したケースから4か月分の保険料免除が受けられることとなります。

 

 免除期間は、年金額の計算上では保険料納付済期間として取り扱われます。保険料前納制度を利用している場合には免除月にかかる保険料は還付されます。(付加保険料は納付することができます)

 免除の届出は住民票を登録している自治体です。

 

 この改正により発生する保険料免除分の補填原資として、国民年金の法定保険料が16,900円から100円加算され17,000円になる予定です。

 

 なお、今回は産前産後休業期間に係る保険料免除制度であり、健康保険・厚生年金には導入されている育児休業期間中の保険料免除制度は含まれていません。

後期高齢者医療制度の見直し

平成30年8月6日

 75歳以上の人が加入する医療保険制度が後期高齢者医療保険制度です。増え続ける医療費の抑制策として、一昨年度まで軽減措置がとられていた保険料について段階的な見直しが行われています。

 

 後期高齢者医療制度の保険料は、年収に応じて納付する「所得割」と加入者ごとに必ず納付する「均等割」があります。平成28年度までは所得割について5割、元被扶養者の均等割について9割の保険料額が軽減されていました。(元被扶養者とは75歳未満で家族の健康保険の被扶養者だった人を指します。)

 

 平成29年度より所得割にかかる軽減率が2割・元被扶養者の均等割の軽減率が7割に下がりました。さらに平成30年度からは、所得割にかかる軽減率がなくなり本来の保険料額となり、元被扶養者の均等割の軽減率が5割となります。なお、元被扶養者の均等割は平成31年度に本来額となります。

 

 【軽減率の変遷】

平成28年度まで:所得割:5割軽減、元被扶養者の均等割:9割軽減

平成29年度から:所得割:2割軽減、元被扶養者の均等割:7割軽減

平成30年度から:所得割:軽減なし、元被扶養者の均等割:5割軽減

平成31年度から:元被扶養者の均等割:軽減なし

 

 保険料は本人納付の場合、7月から改定されており、すでに改定後の金額が通知されているところかと思われます。年金からの天引きで納付している加入者は、10月支払の年金額より改定後の保険料が引き落としとなります。

 

 厚生労働省のHPにも関連資料が掲載されています。あわせてご参照ください。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/koukikourei/index.html

 

 

退職一時金の返還制度

平成30年7月10日

 公務員や私立学校の教職員が加入する共済年金は平成27年10月に厚生年金と一元化されました。一元化される前の時代、共済年金には「退職一時金」と呼ばれる制度がありました。

 

 昭和54年12月31日までに、共済加入期間が20年未満で退職した人に支給されるもので、受給方法は2つありました。退職一時金を「全額」受けとるか「一部の額」を受けとるかを選択するものです。

 

 全額受給した場合には原則その期間の年金を受けることができません。一部の額を受けた人は、受けた一時金の額に一定の利子を加算した額を返還することによって将来の年金額に反映させることができます。

 

 返還方法は、支給される年金額から2分の1を充当する方法と、1年以内に現金で一括又は分割して支払う方法のいずれかを選びます。返還対象者には事前に送付される年金請求書に返還見込額が記載されています。

 

 年金から充当することができるのは、退職一時金に係る共済加入期間の年金が対象です。たとえば、厚生年金と国家公務員共済年金の期間がある人が1号厚生年金と2号厚生年金を受給している場合、充当できるのは2号厚生年金(国共済)部分のみとなります。

 

 返還額を完済する前に死亡したときは、そこで打ち止めとなりますが、退職一時金の支給を受けた人の遺族が、遺族厚生年金を受ける場合には返還が継続されます。

協会けんぽのインセンティブ(報奨金)制度

平成30年6月13日

 全国健康保険協会(協会けんぽ)は、増大する医療費抑制策の一環として平成30年度より「インセンティブ(報奨金)制度」を導入することを決定しました。現在、協会けんぽの保険料率は都道府県支部単位で設定されており、特定健診や保健指導、ジェネリック医薬品の使用割合などの評価要素から全支部をランキングして、上位過半数の都道府県支部に対して得点ごとの報奨金に応じた保険料率を引き下げるという仕組みです。

 

 保険料率への反映は、3年度にかけて段階的に実施されます。

  •  平成30年度分(平成32年度保険料率に反映):インセンティブ保険料率0.004%
  •  平成31年度分(平成33年度保険料率に反映):インセンティブ保険料率0.007%
  •  平成32年度分(平成34年度保険料率に反映):インセンティブ保険料率0.01%

 

 インセンティブ制度の導入により保険料率は、実際どのように変わるのでしょうか?

 (例)標準報酬月額:280,000円 健康保険料率が10%(労使合計)の場合

  • 280,000×10%=28,000円

 (例)同じ条件でインセンティブ制度により保険料率が▲0.1%減額された場合

  • 280,000×9.9%=27,720円(▲280円) ⇒年間▲3,360円保険料減額

 

 いわゆる保険料の割引制度は労災保険料において既に導入(メリット制)されていますが、メリット制は企業の労災事故防止の観点から優遇措置として導入されているのに対して、健康保険料のインセンティブ制度は、都道府県単位の競争を促進する要素を含ませているところが特徴的です。

 

 複数の企業から報酬を受ける場合に「二以上勤務」の問題が発生しますが、都道府県単位の料率差が顕著になると選択事業所に影響を及ぼしてくることも予想されます。

 

 全国健康保険協会のHPに制度の概要が掲載されていますので、あわせてご参照いただければと思います。

  https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat550/insenthibuseido/insenthibuseido

高年齢者・障害者の雇用状況報告

平成30年5月28日

 毎年6月は高年齢者及び障害者の雇用状況報告書を提出する時期になります。高年齢者や障害者の雇用促進を図るために一定規模以上の企業が提出するものです。

 

 高年齢者雇用安定法や障害者雇用促進法では届出対象となる企業を定めています。

  •  高年齢者雇用状況報告書:従業員31人以上規模の事業所
  •  障害者雇用状況報告書:従業員45.5人以上規模の事業所

 

 特に、障害者雇用状況報告書は4月に障害者雇用促進法が改正され、法定雇用率が引きあがったことにともない、対象事業所が拡大されました。

 

 また、障害者の法定雇用率は障害者雇用納付金制度と関連しており、近年では自治体が行う入札参加資格審査における評価要素としても加わり始めています。

 

 今年から両報告書の様式が新しくなり届出は新様式よることとされていますので、注意が必要です。対象事業所には6月8日までに送付される予定で、平成30年分の提出期限は7月17日までとなっています。提出は管轄のハローワークへ持参または郵送です。

 

 東京労働局のHPに届出の詳細と新様式のダウンロードが掲載されています。

 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/shokugyou_antei/_121935_00002.html

第3号被保険者期間の不整合問題

平成30年3月26日

 もう5年ほど前のことになります。「第3号不整合記録問題」という出来事が世間を騒がしていました。年金制度では夫が会社員で妻が専業主婦の場合、夫を「第2号被保険者」といい、妻を「第3号被保険者」といいます。

 

 夫が会社を辞めると第2号被保険者から「第1号被保険者」となり、妻も第3号被保険者から第1号被保険者に切り替わります。切り替えの手続を市区町村で行うのですが、夫のみ手続をして妻が届出をしていないことがわかりました。

 

 本来は第1号被保険者にもかかわらず、第3号被保険者のまま放置された期間を「第3号不整合期間」といい、このままにしておくと年金制度上「保険料未納期間」になってしまいます。

 

 そのため日本年金機構では対応策として「特定期間該当届」制度を導入。対象者に不整合期間について、届出を提出するよう通知しました。

 

 届け出ることによって、未納期間から合算対象期間(いわゆるカラ期間)に切り替わるのですが、年金額には反映されない。そこで過去10年以内の期間については保険料を追納することができる措置をセットで盛り込みました。特例追納制度といいます。

 

 特例追納制度の有効期間は平成27年4月1日から平成30年3月31日までの3年間です。この期間内に特例追納されなかった期間については平成30年4月から年金額が減額されます。減額の上限は10%です。 

 第3号被保険者不整合期間を有している場合で特例追納を今月中に行わないと4月分からの年金額が減額されることになるためご注意ください。

3月より日本年金機構の様式が変更となります

平成30年2月26日

 3月より日本年金機構に届け出る様式が変わります。3月5日よりマイナンバー(個人番号)による届け出が開始されることにともない、適用関係と年金請求書の様式が変更となります。

 

 マイナンバーの届出により氏名変更届や住所変更届が省略されるようになり、今後年金請求時に添付していた住民票などの必要書類が省略不要になる予定です。

 

 手続きが簡略になることは被保険者や年金受給者にとって朗報ですが、マイナンバーを利用した請求手続の場合、本人確認措置(本人確認、番号確認)が必要になるため注意が必要です。

 

 また様式変更に伴い、電子申請プログラムの変更も発生することになっており新しいプログラムをダウンロードする必要があります。

 

 社会保険労務士が代行で電子申請を行う場合、現行では4桁のコード番号が必要でしたが、今後はこれに替えて、全国社会保険労務士会連合会が発行した8桁の社会保険労務士登録番号を設定することになります。

 

 日本年金機構のプレスリリースについては、こちらよりご覧いただけます。

 http://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2018/201802/2018022001.html

個人事業主と労働者の判断基準

平成30年2月16日

 近年増加するフリーランスの身分について、公正取引委員会では、いわゆる「囲い込み」について独占禁止法で保護する方針をうちだすと報道されています。

 

 スポーツ選手や芸能人といった職業を想定しているようですが、このニュースで連想されるのが建設業における一人親方と発注者の身分問題です。

 

 本来、一人親方は個人事業主であり発注者との関係でいえば請負契約を結びます。請負契約では成果物等が納品されれば仕事や作業の進め方について受注者の判断にゆだねられるのが原則です。

 

 ところが形式上は請負契約でも、発注者が作業指示や指揮監督をしていると実態としては雇用契約となり労働社会保険諸法令が適用されることがあります。雇用契約と判断されれば労基法や労災法の保護下に入り、社会保険の加入も義務付けられます。

 

 これと似た問題として、かつて労働者派遣なのか請負なのかをめぐってしばしば争点になったことがあります。派遣と請負については、現在「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)」にそって判断されています。

 

 一人親方なのか労働者なのかを巡っても、今後は争点が顕在化する可能性がありますが、 その判断基準は次のような内容で構成されます。契約内容と実態のギャップが生じていないかの検証材料として参考にしていただければと思います。

 

  • 発注者からの仕事に対して応諾の自由はあるか
  • 仕事が早く終わった時は帰宅できたり、ほかの業務に従事するなどの自由はあるか
  • 発注会社の就業規則等が適用されていないか
  • 始業・終業時間は自由に決められるか
  • 仕事の進め方について自身の判断に任されているか
  • 仕事で使う機械や工具、材料は自身が調達しているか
  • 報酬基準は賃金(時間)ではなく成果物の出来高で決められているか
  • 受注業務にかかる損害が発生した場合、自身が損失を負担しているか
  • 受注業務を遂行できない場合、自分で代わりの者を探しているか

 

 これらの内容に該当していれば労働者性は低いと判断され請負業務になる可能性が高くなりますが、逆に仕事に対する応諾の自由が制限されたり、就業時間や業務の進め方が拘束されていたりすると労働者性が高まり実質的には雇用契約と判断される可能性が高まります。

平成30年度の年金額が決定

 

 年金額の改定は、年度単位で行われることになっており、毎年この時期に新年度額が決定されます。国民年金や厚生年金保険は賃金や物価の変動に合わせてスライドする機能を持っています。

 

 平成30年度の年金額は、結論からいうと今年度と同額になりました。おさらいとして厚生労働省が発表しているモデル世帯の年金額は221,277円となりました。

 

 モデル世帯の年金額は夫婦2人分の国民年金を含み、夫が平均月収(42.8万円)で40年厚生年金に加入した場合で、その間妻が専業主婦であったときの金額を表しています。あくまでモデルの数値であるため、自身の年金額は異なるものであることに注意が必要です。

 

 新年度の年金額の決定にあたり参照された物価・賃金のスライド率は、以下のようなものでした。

  • 物価スライド率:+0.5%
  • 賃金スライド率:-0.4%

 

 物価スライド率がプラスで賃金スライド率がマイナスの場合には、年金額の変更しないというルールがあり今年度と同額となりました。

 

 また、現行の規定では少子高齢化対策としていわゆる「マクロ経済スライド調整率」を反映させることになっています。マクロ経済スライド調整率とは、少子化による現役世代の減少と高齢化による受給世代の増加率より年金額から控除する仕組みであり今年度は-0.3%でした。

 

 しかし、年金額が前年度を上回らない場合には調整率を発動させず次年度以降に繰り越す(キャリーオーバー制度)ことになっています。

 

 現在の受給世代にとっては年金額が下がらないことは歓迎されることなのかもしれませんが、将来世代にしわ寄せが蓄積されていく点は、制度の持続可能性を考えるときに改善の余地がありそうです。

 

 最後に新年度の主要年金額を掲載します。

  • 老齢基礎年金(満額):779,300円
  • 配偶者加給年金(S18.4.2以降生まれ):389,800円
  • 加給年金(第1.2子):224,300円
  • 加給年金(第3子以降):74,800円
  • 障害基礎年金(2級):779,300円
  • 障害基礎年金(1級):974,125円
  • 遺族基礎年金(子1人):1,003,600円
  • 中高齢寡婦加算:584,500円