Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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令和5年度の最低賃金が更改しました。

 令和5年10月10日

 令和5年度の地域別の最低賃金が今月より順次更新されています。

 https://pc.saiteichingin.info/table/page_list_nationallist.html

 

 毎年10月に最低賃金の引き上げについて採りあげるのは、ここ数年の恒例になっていますが、今年度は全国加重平均が初めて1,000円を超えたという意味で節目の年といえそうです。

 

 全国加重平均1,000円超えの目標は、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。」と掲げられたところから推進されてきました。

 

 当時の全国加重平均額(平成28年度)は、823円でした。7年ほどで目標値に達したことになります。ただし令和2年度は、コロナ禍の影響で引き上げを行わなかった年がありましたので、実質的には6年で達成したことになります。

 

 過去の引き上げ額の変遷をたどると、平成28年度以前とそれ以後の引上げ額には10円以上の差があり、政策的に引上げが進められてきたと解釈できそうです。

 

 この間に最低賃金の意味合いも大分変ったような印象を受けます。

 個人的な体験でいうと、学生の頃のアルバイトの時給には「世間相場」とでもいうようなものがあって、最低賃金よりも高い水準でした。企業側にも最低賃金の水準で求人する感覚はなかったと思います。

 

 数年ほど前より10月の改定に合わせて、非正規労働者の時給を引き上げたり、固定残業制度を導入している会社で賃金割合を見直したりする傾向が増えてきています。

 最低賃金が標準賃金(=世間相場)の性格を持ち合わせてきていることになります。良し悪しは別として、企業側にも最低賃金でもって労働条件とすることに抵抗感がなくなってきているのかもしれません。

 

 最低賃金が本来の機能を発揮してきたと捉えるのか、企業側の余裕がなくなってきているのか、はたまた人口減少による売り手市場の結果なのか、はっきりしないところがあります。

 

 8月に政府は2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円まで引き上げることを、新たな目標に掲げていますが、約10年後には最低賃金の位置づけもまた様変わりしているかもしれません。