Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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採用・異動

採用は労務管理の入り口

 活躍してくれる人材を求めるのはすべての会社の願うところでしょう。採用はいわば労務管理の入り口ともいえます。入社のプロセスは公募、紹介、縁故など様々ですが、公正な競争を担保するために一定のルールが設定されています。 

  • 年齢による差別の禁止
    平成19年の雇用対策法の改正によって、事業主は労働者の募集や採用について年齢に関わりなく均等なチャンスを与えるように義務付けられました。具体的には求人の際に年齢制限を盛り込むことを禁止するものですが、例外的に制限を設けることが認められるケースがあります。
    ① 定年を上限として、その年齢未満の労働者を無期雇用労働者として募集・採用する場合
    ② 労働基準法など法令による年齢制限がある場合
    ③ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者等を無期雇用労働者として募集・採用する場合
    ④ 技能やノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
    ⑤ 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
    ⑥ 60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の 施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合

     
  • 性別による差別の禁止
    男女雇用機会均等法より女性であることを理由として募集・採用で差別的取扱いをすることが禁止されています。

     
  • 障害者への差別禁止と合理的配慮の提供について
    平成28年の障害者雇用促進法の改正にともない、事業主は労働者の募集及び採用において、障害者であることを理由に差別することが禁止されました。また障害者から必要な配慮の申出等を受けた場合は、合理的な配慮の提供が義務付けられています。「合理的な配慮」とは、例えば車椅子を利用する労働者に対して、机や椅子の高さ調整をすることや知的障害者の労働者に対して文字や絵図などで業務の説明をするなど、が考えられます。

 

 年齢や性別、障害などによる採用差別は法で禁止されているからしないことは勿論なのですが、そもそもなぜ採用をためらってしまっているのかを改めて検討してみるのが労務管理上は有効です。

 例えば、管理職よりも年齢が高い社員は採用しにくいというのであれば、管理者研修を充実させることで解決できるかもしれませんし、障害者雇用の推進が自社の仕事の仕方を見直す契機につながることもあり得ます。

 入り口を広げたことで想像もしなかった人材と出会うことが実現されれば、企業にとっても願ったり叶ったりということになるのではないでしょうか。

労働契約の締結を忘れずに

 採用にまつわるトラブルのひとつに労働条件の食い違いによる紛争があります。その多くが「言った言わない」の次元によるものです。

 つまり書面で労働契約を締結していないというもの。
 あとに尾を引かないようにするために、書面による労働契約の締結は不可欠です。会社が成長してくると、統一的な労働条件のルールを構築する必要が出てきます。
 就業規則がその役割を果たします。
 労働基準法では10人以上の事業場に作成と届出の義務が課されていますが、10人未満であっても整えておくことをご提案しています。
 就業規則は社内に周知されることによって、その内容が有効となるものと位置付けられており、労働契約の代わりをなすものでもあります。
 労働契約書と就業規則には、書面で記載しなければならない事項があり、その範囲はほぼ同じものとなります。就業規則と労働契約は相互補完の関係を持つわけです。
 就業規則で基本的な労働条件をさだめて個別の条件を労働契約書に明記します。作成にあたり注意する点は、両者の内容に食い違いが生じないようにすることです。
 とくに賃金や育児休業といった内容は就業規則と別規程化して作成することが多く、変更手続きが漏れることがあります。

 多少面倒でも改訂履歴を作成しておきましょう。あとで振り返る必要が生じたときに変遷をたどることができます。 

配置転換はどこまで許されるか

 企業で働く以上、職種や勤務地の異動-配置転換-は避けて通れない問題です。

 業務命令の一環として行われるものであり、争点はないように思われますが労働者の状況や配転の意図によっては、その有効性が争われることもあります。

 大前提として就業規則に配置転換の規程が存在し、かつ、拒否した場合には懲戒処分の対象となる内容が明記されていることです。

 労働者が地域限定社員として採用されている場合には、その範囲を超える配置転換は本人の同意が必要になるでしょう。

 近年では仕事と育児の両立支援や介護離職の防止が社会的要請にもなっているところから、一定の配慮が求められるようになってきました。
 育児介護休業法にも「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない(第26条)」と定められています。

 もちろんここでいう「配慮」というのは「配置転換ができない」と同義ではありませんが、会社にとっては無条件で行使できる余地が減っていることはいえるかもしれません。

 労務管理の側面から見れば、配置転換を命じる具体的理由がどれだけ合理性と納得感を満たしているかにかかっていると考えられます。