Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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定年・退職・解雇・雇止め

 こちらは定年・退職・解雇・雇止めにまつわるページです。

 会社から籍がなくなる点では同じことですが、辞め方が大いに異なります。労働者の身分にかかわるところであるため、特に定年や解雇については法令や指針で制約が設けています。

 違いにポイントを当てながら整理を試みたいと思います。

 

定 年

 定年とは、ある一定年齢に達したときに自動的に会社を退職する制度です。現在、定年は60歳以上にすることが高年齢者雇用安定法で定められています。

 年金の支給開始年齢が60歳から65歳に向かって段階的に引き上げられている現状では空白の期間を埋める必要があることから、65歳までは就労可能な制度を設けることになっています。具体的には次の3つから選択します。

  1. 定年制度の廃止
  2. 定年年齢の引き上げ
  3. 継続雇用制度の導入

 多くの企業が選択しているのが「3.継続雇用制度」です。その中でも継続雇用制度には再雇用制度と勤務延長制度があります。再雇用制度はいったん退職の扱いとし、文字通り再度雇用するもので、勤務延長制度は退職することなく勤務を延長する制度です。再雇用制度のほうが導入しやすく多くの企業が採用しています。

 再雇用制度については、労使協定を締結することによって一定の条件を満たした者を対象とすることができましたが、現在は原則希望者全員を対象とすることが求められています。

退 職

 退職の書類は、個人的な事情や転職、最近社会問題にもなっている介護離職など理由はさまざまありますが、定年や解雇と決定的に異なるのは本人の意思が内在していることです。

 就業規則などで退職については届出を義務付けている企業が多いと思いますが、これは本人からの意思が根底にあるという考えに基づいているためです。

 賃金や退職金、失業保険(雇用保険)などの計算にも関係してくる部分でもあり、運用ルールとして徹底することが大切です。

解 雇

  解雇とは、使用者側が一方的に労働者に対して労働契約の解除を通知することです。定年退職のようにあらかじめ労働契約の期限が示されているわけでなく、退職のように本人の意思や同意があるわけでもないため、より強い規制が労働基準法で定められています。

 まず、労働者が産前産後休業や業務上の負傷や疾病によって療養のため休業している期間とその後30日間は解雇することができません。(打切補償を支払ったり、天災事変その他やむを得ない理由で事業継続が不可能になった場合を除きます)

 そして、解雇をするには30日前に予告するか30日分以上の平均賃金を支払うことが求められています。

 解雇に関しては、労働契約が一方的に終了する関係上、その解雇が妥当なものであるかどうかという「そもそも論」が労使紛争が起こった際に問われます。「解雇権濫用法理」と呼ばれるものです。難しい言葉ですが、労働契約法の16条に記載されています。

 

【労働契約法16条】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

 「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」というのは何ともあいまいな表現であり、文章どおり個別具体的案件ごとに判断されるものであります。

雇止め

  雇止めとは、使用者側が契約社員などに対して労働契約の期間満了にともない契約解除を通知することです。解雇のように使用者側からの働きかけが契機になっている点は同じですが、あらかじめ労働契約の期限が示されており、その期間満了日が到来したから解除するのですから、労使問題が介在する余地はないように思われます。

 

ところが、有期労働契約を締結していた場合でも、その運用が実質的には無期労働契約と同一視できるときには、雇止めが解雇と同じような基準で有効性を判断されることがあります。「雇止め法理」と呼ばれるものです。これまた複雑な言葉ですが、労働契約法の19条に定められています。

 

【労働契約法19条】

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
① 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
②当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
 
 労働契約法19条は過去の裁判例を条文化した経緯があるため、表現がわかりにくい条文です。シンプルにまとめると、「①または②に該当している有期契約労働者が契約の締結や更新を希望している場合には、相応の理由がない限りは契約を承諾したものとみなします」といった意味合いになります。
 
 ①は、過去に何度も契約を更新してきた実態があって、事実上無期契約と同様と認められる場合をいいます。
 ②は、例えば会社が労働者に対して更新を約束するような言動があった場合が考えられます。
 そして、下線部分の「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」が同じく下線部分の「相応の理由がない限り」と対比されます。
 
 詰まるところ、身分上は契約社員やパートタイマーと認識していたとしても、その契約の締結や更新などが業務に忙殺されてなおざりになってしまうと、真に雇止めが必要なことになった際に正社員と同じ基準にハードルがあがってしまうことになります。