Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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令和4年度の年金額が発表されました

令和4年2月7日

 厚生労働省は、121日、令和4年度の年金額を公表しました。

 公的年金は毎年4月に改定されますが、改定に用いる統計(全国消費者物価指数)が1月に公表されるため、この時期に新年度の年金額も発表される慣行です。

 

 令和4年度の参考指標は、次の通りです。

  1. 物価変動率:▲0.2%
  2. 名目手取り賃金変動率:▲0.4

 

 1、2がともにマイナスで、1>2であれば名目手取り賃金変動率を用いるとされています。そのため令和4年度の年金額は前年度比で0.4%引き下げとなります。

 

 本来、年金額改定のルールでは、物価変動率・名目手取り賃金変動率とはべつに「マクロ経済スライドによるスライド調整率」という数値も用います。

 マクロ経済スライド調整率とは、公的年金の加入者数(被保険者数)と平均余命の伸び率(受給者数)をもとに、その比率を年金額に反映させる仕組みです。

 

 少子高齢化が進む日本では、将来世代に負担を回さないようにするために導入されているものの、マクロ経済スライド調整率は賃金や物価がプラスになった際にのみ発動されることになっています。発動されない場合には翌年度以降に繰り越すことになっており、これをキャリーオーバー制度といいます。

 

 昨年度も物価・賃金の伸び率はマイナスであったため累積のスライド調整率は次のようになりました。

  • 令和3年度(▲0.1%)+令和4年度(▲0.2%)=累積スライド調整率▲0.3

 

 景気が上昇局面にならなければマクロ経済スライドが発動されないということは、人口構造が改善しないかぎりスライド調整率が蓄積されていくことになります。

 そのため、物価や賃金が下落しているときにもマクロ経済スライドを反映するべきだという意見がしばしばなされます。

 

 今から20年ほど前、年金額の改定は「物価スライド方式」を採用していましたが、平成12年~14年ごろに物価が下落したにもかかわらず年金額を据え置いた時期がありました。

 その未消化分(2.5%)を平成25年~27年に消化したことで本来水準の年金額との差額を解消させた経緯があります。

 

 マクロ経済スライドの未調整分が蓄積していく様子は、「いつか来た道」を彷彿とさせます。

 もちろん特例物価スライドの未消化とマクロ経済スライドの未調整は、趣旨も仕組みも異なるわけですが、ツケが将来世代に回っている現象自体は相似していますので、早期に調整される仕組み作りも検討する段階にきていると思われます。

 

 なお、年金生活者支援給付金や特別障害給付金などは物価変動率を基準とするため前年度比0.2%の引き下げとなります。

 

 詳細は、厚生労働省のホームぺージをご参照ください。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000191631_00014.html