Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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令和3年度の最低賃金額について

令和3年10月19日

 毎年10月は最低賃金の改定時期にあたります。

昨年は、新型コロナウイルス感染症の影響より実質改定なしでしたが、今年はおととしまでの流れに戻り、全国加重平均で28円のアップとなりました。 

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 賃金引上げの際にしばしば議論になるのが、「貧困対策」と「生産性の向上」の効果についてです。

 前者については、最低賃金レベルで働く労働者にとっては、収入増加につながり生活水準が改善するという論理です。

 後者については、前者の結果、使用者側からすると賃金コストの増加になるため、業務効率化や働き方を見直す契機なるという考えが挙げられます。

 

 一方で、最低賃金の底上げは、これらの効果に結び付くかどうか疑問視する声もあります。

 

 最低賃金で働く労働者の多くは、家計補助的な役割をしているケースが多く、配偶者の扶養範囲内で働いている人も相当数いるといわれています。

 いわゆる「103万円の壁」や「130万円の壁」の制約があるために、時給が上がる分だけ労働時間を減らすことになり、収入の増加に結び付かない懸念が指摘されています。

 最低賃金の改定は、売上や利益の状況とは無関係に10月に自動的に行われるため、使用者側からしても人件費管理の観点から、このような働き方を容認していく意向が働きがちです。

 

 最低賃金の引き上げは、確かに生産性の向上を促す効果が期待できる面もありそうですが、労働集約的な産業や中小企業・小規模事業場などの価格決定力がない企業では、結局自社で賃金コストを引き受けざるを得ないことにもなりそうです。

 

 「全国加重平均1,000円の実現」の旗印のもと、近年はハイペースで上昇を続けています。このペースでいけば近い将来、目標は達成されることは確実ですが、その後の最低賃金額の在り方も不透明なところがあります。

 

 最低賃金層の多くは非正規労働者でもあるといわれています。その面では同一労働同一賃金の格差解消の効果が期待できるといえます。

 

 そのうえで実質賃金や会社の業績に引っ張られるように最低賃金が上がっていくような仕組みになれば納得感のある制度にもなっていくような気がします。