Mikura Labor & Social Security Attorney Office

みくら社会保険労務士事務所

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公的年金の財政検証(令和元年度)が公表されました。

 厚生労働省は8月27日、公的年金制度の財政検証を公表しました。

 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html

 

 財政検証とは5年ごとに経済状況や労働人口等をもとに、年金財政の影響や給付水準の変化を報告する「定期健診」です。これまで平成21年、26年と行われてきました。

  

 財政検証の骨子は、将来の経済状況を6つのシナリオに分類して、それぞれのケースで現役世代との所得代替率を示しています。

 

 20019年度の所得代替率は61.7%でしたが、もっとも堅調に経済成長した場合(+0.9%)、2046年度の所得代替率は51.9%となり、現在より約10%下がる推計です。

 

 財政検証をもとに厚生労働省は年金財政の健全化と将来世代の負担軽減を図るため、次のような制度改正を検討しています。

  •  厚生年金の適用拡大
    ① 企業規模要件(501人以上)の廃止⇒被保険者約125万人増加
    ② 賃金要件(8.8万円以上)も廃止⇒同約325万人増加
    ③ 月収5.8万人以上の全雇用者に適用⇒同約1,050万人増加
  • 国民年金の加入年齢を60歳から65歳に延長
  • 繰下げ年齢を最長70歳から75歳までに引き上げ
  • 65歳以上の在職老齢年金の廃止
  • マクロ経済スライドの「名目下限ルール」の撤廃

 現在の財形検証は平成16年の年金法改正により始まりました。それ以前は「財政再計算」と呼ばれる制度改正と物価スライド率の適用により年金額を調整する仕組みでした。

 

 財形検証の仕組みに切り替わったことによって長期的な制度維持(おおむね100年)と老後の生活保障(現役世代の50%)の実現が政府・厚生労働省の至上命題として義務となりました。

 

 財政検証の法令根拠は、国民年金法・厚生年金保険法に示されています。少し長い条文ですが、参考までに掲載します。

 

【国民年金法第4条の2:財政の均衡】

  1. 国民年金事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。

 

【国民年金法第4条の3:財政の現況及び見通しの作成】

  1. 政府は、少なくとも5年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による給付に要する費用の額その他の国民年金事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない。
  2. 前項の財政均衡期間は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね100年間とする。
  3. 政府は、第1項の規定により財政の現状及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 

【国民年金法平成16年改正法附則第2条:給付水準の下限】

  1. 国民年金法による年金たる給付及び厚生年金保険法による年金たる保険給付については、第1号に掲げる額と第2号に掲げる額とを合算して得た額の第3号に掲げる額に対する比率が100分の50を上回ることとなるような給付水準を将来にわたり確保するものとする。
 
① 当該年度における国民年金法による老齢基礎年金の額(当該年度において65歳に達し、かつ、保険料納付済期間の月数が480である受給権者について計算される額とする。)を当該年度の前年度までの標準報酬平均額(厚生年金保険法第43条の2第1項第2号イに規定する標準報酬平均額をいう。)の推移を勘案して調整した額を12で除して得た額に2を乗じて得た額に相当する額 ※夫婦の老齢基礎年金の合計月額
 
② 当該年度における厚生年金保険法による老齢厚生年金の額(当該年度の前年度における男子である同法による被保険者(次号において「男子被保険者」という。)の平均的な標準報酬額(同法による標準報酬月額と標準賞与額の総額を12で除して得た額とを合算して得た額をいう。次号において同じ。)に相当する額に当該年度の前年度に属する月の標準報酬月額又は標準賞与額に係る再評価率(同法第43条第1項に規定する再評価率をいい、当該年度に65歳に達する受給権者に適用されるものとする。)を乗じて得た額を平均標準報酬額とし、被保険者期間の月数を480として同項の規定の例により計算した額とする。)を12で除して得た額に相当する額 ※男性(夫)の老齢厚生年金の月額
 
③ 当該年度の前年度における男子被保険者の平均的な標準報酬額に相当する額から当該額に係る公租公課の額を控除して得た額に相当する額 ※現役男性の手取月収額

【厚生年金保険法第2条の3:財政の均衡】
  1. 厚生年金保険事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。

 

​【厚生年金保険法第2条の4:財政の現況及び見通しの作成】

  1. 政府は、少なくとも5年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による給付に要する費用の額その他の厚生年金保険事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない。
  2. 前項の財政均衡期間は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね100年間とする。
  3. 政府は、第1項の規定により財政の現状及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。